マンションリノベーションにおける二重床と直床の違い
マンションリノベーションを考える際、床の構造に関する選択は非常に重要です。特に「二重床」と「直床」という2つの床タイプは、それぞれ異なる特徴を持ち、リノベーションのプランや施工方法に影響を与えます。本コラムでは、二重床と直床の違いについて詳しく解説し、リノベーション工事への影響について説明していきます。
目次
二重床とは?
二重床とは、フローリングと床スラブ(コンクリート部分)の間に空間がある、二層式の床のことです。床スラブに支持ボルト+防振ゴムをつけ、その上に下地材+フローリングなどの床材を貼る構造で、築年数が比較的新しいマンションは二重床が採用されています。
二重床のメリット
・軽量床衝撃音の場合、遮音性が高い
・リノベーションがしやすい
・床の踏み心地が良い
フローリングの下に空間を設けているため、遮音性が期待できます。特にスリッパの足音や小さな物を落とした時の音(軽量床衝撃音)などは、空気に吸収されるので階下への騒音対策として効果的です。
二重床の場合、床下の空間に給水管、排水管、ガス管、電気配線などを通します。そのためリノベーションやリフォームで間取りを大きく変える時にも、配管などの移動が比較的容易です。さらに、二重床には点検口が設置されているため、日々の生活の中で水回りやガスのトラブルが生じた時に、メンテナンスがしやすいのもメリットとして挙げられます。
さらに、二重床の場合、防振ゴムや空気層が遮音性を高めているため、クッション性の強い床材を使用する必要がありません。床の踏み心地に関しては人それぞれといった面もあるものの、ふかふかのフローリングに違和感や安っぽさを感じるケースもあるので、二重床のしっかりした踏み心地もメリットと言えるでしょう。
二重床のデメリット
・重量床衝撃音の場合、遮音性が低い
・リノベーションで工法を変える場合、天井高が低くなる
・リノベーションで工法を変える場合、コストが高くなる
二重床は足音などの小さな音については遮音性が期待できる反面、子どもが飛び跳ねる音など低く大きい音は階下に伝わりやすい特徴もあります。また、既存の物件を二重床にリノベーションする際にも気にすべき点があります。
二重床は床の下に空間を作っているので、スリッパの足音や箸などの小さな食器を落とす音(軽量床衝撃音)は空気に吸収されるで、遮音性が期待できます。一方で、人が飛び跳ねた時に鳴るドスンという音(重量床衝撃音)は、逆に空気を伝って広範囲に広がります。これを「太鼓現象」と言います。このように音の性質によっては、床材と床スラブだけの構造に比べて、遮音性が低くなるので注意が必要です。
また、リノベーションで既存の構造を変えて二重床にする場合には、支持ボルトで床面を上に上げるので天井高が低くなります。空間が狭くなる分、快適性に影響を与えるでしょう。
同じく二重床にリノベーションする場合には、材料費と施工費が余計にかかるので、その分費用が高くなります。
直床とは?
直床(じかゆか)とは、床スラブの上にクッション材とフローリングなどの床材が直接貼り付けられている床です。築古のマンションには直床が採用されているものもあります。
直床のメリット
・コストが安い
・重量床衝撃音の場合、遮音性が高い
直床のメリットはコストが安いことです。床材の値段や施工費用が抑えられるため、リノベーションの際にはコスト削減効果があります。原材料価格が上がっている市況においては、マンション価格にも反映される場合があります。
また前述の二重床のメリット・デメリットでも触れたように、音の性質によっては直床の方が遮音性が高くなることもあります。直床はコンクリートの上に直接床材を貼るので、子どもが飛び跳ねる音などの低い音(重量床衝撃音)を吸収する効果が期待できます。
ただし、直床の遮音性は床スラブのコンクリートの厚さなどの性能面によって大きく左右されます。また二重床でも音を逃がす技術によって遮音性を高めることも可能です。そのため、二重床と直床のどちらが遮音性に優れているか判断するためには、業者の知見を借りて、物件ごとに見極める必要があります。
直床のデメリット
・リノベーションには向いていない
・床の踏み心地が悪い
直床のもっとも大きな弱点は、大規模なリノベーションがしづらいという点です。直床の場合には、配管類が通っている部分だけ二重床になっています。そのため、配管類に影響が出るような水回りの変更が難しくなります。例えばキッチンやトイレ、浴室、洗面所などの場所を大きく変えるリノベーションには向いていないということになります。
ただし、二重床になっている箇所だけ収納棚に隠すなど、設計を工夫することで、水回りに影響するような間取り変更もできる場合があります。制限のある物件をどのようにリノベーションするかは、リノベーション業者の実力次第とも言えます。
もう一つのデメリットは床の感触です。直床は床スラブの上に床材(クッション材とフローリングなど)を貼り付けます。そのため、足で踏んだ時に、二重床とは違い柔らかさを感じることがあります。踏み心地は個人差がある要素ではあるものの、人によってはこの感触がデメリットとなることもあるでしょう。
二重床と直床の見分け方
床の工法を物件情報から確認するのは難しいものの、内見の際などに自分で簡易的に確認することはできます。また今住んでいる家が二重床なのか直床なのかも、確認可能です。ここでは主な見分け方を3つ紹介します。
①窓周辺をチェックする
まずは掃き出し窓(リビングにある大きな窓)のサッシと床の高さを見比べる方法です。床のラインがサッシレベルと同位置もしくは少しだけ下がっている程度ならば、二重床の可能性が高いでしょう。
逆に、サッシと床の高さが10センチ以上ある場合には直床の可能性が高いと言えます。
②水回りと廊下の高さをチェックする
水回り周辺には給排水管を入れる必要があるので、必ず床下に空間があります。つまり、周辺と比較して、水回り部分だけ10センチから15センチ程度上がっている場合には、他は直床と言えます。また、廊下に比べて居室が一段下がっている場合には、居室の床は直床の可能性があります。
また、床の高さ以外にも、最初からカーペット貼りの部屋や、ふわふわしたフローリングも直床の可能性が高いでしょう。これは、床スラブの上に床材を貼る場合には、遮音性の観点から、クッション性のある素材を使う必要があるためです。
リノベーション工事への影響について
床の工法が二重床なのか直床なのかで、リノベーション工事にはどのように影響するのでしょうか。これから物件を探す人、今の家のリノベーションを検討している人は参考にしてみてください。
二重床の場合:間取り変更がしやすい
二重床の場合には水回りの配管の移動が比較的容易なので、大がかりなリノベーションも可能です。二重床とリノベーションは相性が良いと言えるでしょう。
間取り変更などの大幅なリノベーションを行っても、床下の配管工事によって床の高さが変わらないので、「部屋が狭くなる」「天井高が低くなる」といったデメリットもありません。
一方、直床から二重床にリノベーションする際にはコスト面での注意点もあります。マンションは、管理規約によって遮音規定が定められています。フローリングなど床材の性能が、規定値以上の遮音等級を満たしていないと規約違反になります。
マンションでは一般的に、遮音等級がLL45以上(数値が小さい方が遮音性が高い)とされています。性能が高い専用の遮音下地を使って二重床にしなければならないので、遮音シート付の直床を敷くよりもコストは上がります。
直床の場合:間取り変更はできるものの不都合もある
直床は一般的にはリノベーションと相性が悪いと言われています。先述してきたように、水回り周辺には必ず配管を床下にはわせる必要があるので、その分床を上げなくてはいけません。
水回りの位置を変えるとなると、その部分だけ段差が発生します。生活する上で不便になることはもちろん、バリアフリーの観点からもデメリットとなります。また、そもそも給排水管が床スラブを貫通している場合には、水回りの変更ができないので、間取り変更に大きな制限が生まれます。
直床をすべて二重床にして全体的に床を上げる方法もありますが、天井や梁までの距離が近くなり、部屋が狭くなるなどの問題点も発生します。天井の低さは快適性にも直結する要素なので、直床から二重床へのリノベーションは十分に検討してから行う必要があります。
まとめ
リノベーションを検討しているマンションの床工法を調べておくことで、間取り変更の際に影響が出そうなポイントを事前に把握できます。ここで紹介した「見分け方」も有効ですが、管理組合に問い合わせれば竣工時の図面を見せてもらえます。
ただし、過去にリフォームをされている場合は床工法が変わっている可能性もあるので、注意しましょう。マンションを購入する前にあたりをつけておくためにも、リノベーションの知見がある会社に相談し、内見に同行してもらうように頼んでみるといいでしょう。
Nplus studioでは、リノベーションに不向きな物件や、内見時に注意して確認した方が良い場所などを、セミナー形式でお伝えしているイベントを開催しています。リノベーションの物件を探している方は、ぜひ一度ご参加ください。また内見を予定している人で、床工法について不明点や不安点がある場合も、お気軽にご相談ください。