二重天井と直天井の違いとは?それぞれのメリット・デメリット
マンションの天井の構造は大きく分けて「二重天井」と「直天井」の2種類あります。
古いマンションは天井高が2.2m程度のものが多いですが、最近のマンションでは2.4m程度が主流で3m近い物件もあります。直天井と二重天井にはそれぞれメリット・デメリットがあり、リノベーションでできるデザインや工夫も変わってきます。まずはそれぞれの特徴と構造を理解し、自身の理想のリノベーションを想像してみましょう。
目次
二重天井とは?
二重天井とはコンクリートスラブ(鉄筋コンクリート製の天井)の下に軽量鉄骨または木による下地材を吊り下げ、その上にプラスターボード(石膏ボード)をビス(先端がとがっているネジ)止めしてクロスなどを貼った天井です。
最近の分譲マンションはほとんどがこの二重天井になっています。
コンクリートスラブと天井の間に空間ができ、この空間のことを「懐(ふところ)」といいます。天井の懐には電気の配線やダクトは天井裏を通っており、お部屋の中からは見えません。
二重天井のメリット
・スラブ面は見映えを考慮した仕上げなどをしていないため不陸があったり、コンクリートを打ち込む際の型枠の金具の痕などが残っているが、二重天井はこうした粗いスラブ面を隠して、クロスや塗装できれいに仕上げることができる
・天井面に設けられる電気配線や排気ダクトなどが見えないすっきりとした天井を作ることができる
・部屋うちに出てくる梁型などを隠しながら、フラットで一体化した天井を作ることができる
・天井面に埋め込み型のダウンライトなどを自由に設けることができる
二重天井のデメリット
・懐の分だけ天井高が低くなる
直天井とは?
直天井とはコンクリートスラブに直接クロスなどの仕上げ材を貼って仕上げた天井です。そのため、ダクトなどを隠すように「梁型」をつくっていたり、ダクトが通るキッチンまわりだけは二重天井にしていたりするので、お住まいの中で一部天井が低くなっている箇所ができている場合もあります。
直天井のメリット
・天井高が高くなること
・ラフな仕上げのコンクリートスラブ面をあえて見せた空間デザインで設計できる
直天井のデメリット
・最上階などの場合は特に外気の影響を直接受けやすく断熱性能がやや落ちてしまう
・天井を通るダクトなどを隠そうとすると梁型をつくることになり、天井の低い箇所、高い箇所ができてしまう
天井の構造と遮音性
天井の構造は遮音性に大きな影響を与えます。
二重天井には高い遮音効果があります。天井の間にある空気層が、音の伝達を和らげることで、天井から階下への音が伝わりにくくなるのです。ただ、空気層が共振すると、上階の音が伝わりにくくなってしまう(太鼓現象)というケースもあり、衝撃音の種類やコンクリートスラブの厚さ、施工方法なども大切になってきます。
また、コンクリートスラブと天井の間の空間に防音材・遮音材・吸音材などを取り付けることにより、より階下から天井への音の伝達を抑えることができ、遮音性を高めることができます。
これらは、断熱性の向上にも大きく影響します。空気層が熱の伝導を阻害し、夏の暑さや冬の寒さを和らげるため、エネルギー効率が良くなります。結果として、居住空間が快適に保たれるだけでなく、光熱費の削減にも繋がります。実際にリノベーションを行った多くの事例で、住む人々からは「生活音が気にならなくなった」、「以前よりも感じる温度が快適になった」といった声が上がっています。
では遮音性、断熱性の観点から直天井は選ばない方が良いのか
結論から言うと、二重天井をお勧めしています。ただ、天井高を出来るだけ高くしたい、コンクリートスラブを見せたお洒落なデザインにしたいといった要望がある場合は、マンションを購入する際にポイントをお伝えしています。
断熱性の観点からは、角部屋、最上階を避けること。マンションは隣接する住戸があることで、ある程度の断熱性を保持しています。ただ、角部屋、最上階になると、直接外気からの影響を受けやすくなってしまうため、お勧めしていません。もちろん、お客様が何を1番重視したいかで、物件選びは変わってきますが、省エネの観点からも内側の住戸を選ぶのが望ましいです。
リノベーションで天井を工事する際の注意点
電気配線の位置は確認しておいた方がよいでしょう。
もともとが直天井のマンションの場合、電気配線用の配管や照明器具用のシーリング用の下地などがコンクリートスラブに直接、埋設されていることがあります。
もちろん、電気用の配管や照明ダクトレールを露出する形で取り付ければ対応できますが、配線の経路の変更や配線からの電気の取り出しが自由にできません。
また、もともとが直天井の物件は、配管などが埋め込まれている部分のスラブの厚さが薄くなっており、同じスラブ厚の二重天井の物件に比べて、強度や遮音性の面で劣っている可能性があるということも要注意です。
事前に住戸内部の矩形図(かなばかりず。建物の一部を切断して納まりや寸法等を細かく記入した断面の詳細図)や設備図などでスラブ厚や配管経路などを設計の方と確認しておきましょう。
躯体表しの天井にする際の注意点
リノベーションでコンクリ―トの躯体表しの天井にしたい、といった場合、もともとが直天井の場合は特に注意が必要です。
直天井では仕上げ材をコンクリートスラブに直接はりつけているため、接着剤がうまくはがれない、クロスがうまくはがれない、といったケースがよくあります。既存の状態次第で必ずしもキレイな躯体表しの天井になるとは限らない、という点は注意が必要です。
逆にもともとが二重天井のお住まいで躯体表しの天井にしたい、という場合はコンクリートスラブに直接なにかを貼っているわけではないため、良い状態で躯体表しにできることが多いです。
また、リノベーション費用についてもリノベーションで二重天井を新たに造る場合と直天井で躯体表しにする場合で「躯体表しにするとリノベ費が大きく節約できる」という誤解が多いのも注意点です。
確かに天井をつくらない「だけ」であれば費用の節約になりますが、躯体表しの場合は電気用の配管をとりつけたり、躯体の状態によっては左官や塗装をほどこしたり、といった作業が必要になります。これらの条件によっては思ったほど費用は安くならない、というのも留意しておきましょう。
天井の構造の見分け方
マンションのリノベーションを考えている方にとって、現状の天井の構造がどうなっているかは、希望するリノベーションができるかどうかを左右することになるのでとても重要なポイントです。
ここでは天井の構造の見分け方をいくつかあげてみます。
①照明器具をみる
一番簡単な見分け方は「照明器具をみること」です。
天井にダウンライトが埋め込まれていれば、少なくともダウンライトの器具を埋め込むだけの懐がある、ということになるので、「二重天井」です。
逆にひっかけシーリングの器具が天井に直接ついていれば、「直天井」ということになります。
②図面やパンフレットでチェック
もし新築時からリフォームやリノベーションをおこなっていないマンションであれば、新築時のパンフレットや図面をみることで天井の構造がわかる場合があります。
リフォームやリノベーションをおこなったマンションでもそのリノベーション工事の際に作成した図面をみることで判断できる場合があります。
③たたいてチェック
非常に原始的な方法ですが、天井をたたいてみることでも二重天井かどうかが判別できることがあります。
直天井であればコンクリートスラブに直接ボードや仕上げ材が貼ってあるため、たたいた時の音は殆ど響きません。逆に二重天井であれば、中が空洞になっている箇所があるため、音が響くところがあります。
④点検口からのぞいてチェック
多くのマンションではお風呂の天井に点検口があります。点検口をあけると天井のコンクリートをみることができます。
この点検口からまわりを見渡してみると、二重天井になっているかどうかがわかる場合があります。
ただ、多くの場合、お風呂のまわりには梁があって、点検口から遠くまでまわりを見渡すことはできません。
それでも以下のようにすることで二重天井かどうかを推測することは可能です。
・点検口をあけた状態でお風呂の床からコンクリートスラブまでの高さをはかる(①)
・お風呂の床には排水管が通るため、コンクリートスラブまでの床下はおよそ10~15cm
・お風呂の床からスラブまでの高さに10~15cmを足す(②)
これで床下のスラブから天井のスラブまでの高さがわかります。
お風呂の床も廊下やリビングとフラットになっているようなお住まいでは①の高さとそれぞれのお部屋の天井高を比べてみて、ほぼ同じならば直天井、10㎝くらい低くなっていれば二重天井、といった具合に推測ができます。
お風呂の床があがっているようなお住まいであれば、②の高さとそれぞれのお部屋の天井高を比べてみると同じように予測がたてられます。
ただ、いずれも「予測」でしかありません。マンションによっては思わぬところに梁があったり、二重天井と直天井を併用していたりするので、リノベーション会社の担当者にしっかりみてもらってから判断するようにしましょう。